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「恐怖旅館」 エピソード4 最終章

「何、寝てんの?」
「おい!起きんね!!」

また、ふたりの顔が私を覗き込んでました。

「はっ!!?く、首が!!、ほら!!人形の首がポロリて!!」

私が、指をさしてその人形を見たとき、人形は普通のままでした。

「どうしたん?」
「なんや?日本人形やんか?」

どうやら人形に見つめられてる間に、私は、その恐怖から気絶してしまい、
あの時の人形の首が落ちた光景は、気絶の中で私が勝手に見たシーンのようでした。

「あっちの部屋に行こうや。まさか、寝てまうとは思わへんかったわ」
「どがんする?ここでもう寝る?」
「いやいや、行く」

とても一人では居られません。この旅館、不気味過ぎです。
いくら古旅館とは言え、観光地の旅館の廊下が、今時、裸電球でしょうか?

それから、私、石川優子(仮名)、円広志(仮名)、野元英俊(仮名)の5人が、集まり、
一部屋で一夜を明かそうということになりました。

石垣島では、こんなことになってしまいましたが「はいむるぶし」では、
ごちゃごちゃした都会から、あまりにも解放され、それは楽しいひとときを送りましたので、
「もう東京には戻りたくない」などと、これまで味わったことのないようのない、
心の裕福感を味わったのです。

特に、関西の円広志(仮名)は、お笑いのセンスも抜群で、
切れ間のないギャグで私たちを笑わせてくれました。

時計は、真夜中2時を回っていました。

「な?修学旅行ごっこせーへん?」
「何や?修学旅行ごっこって」
「みんなで、一つずつ、怪談話をせーへん?」

私が、最も避けたい遊びでした。

「いやいやいや、それは止めようや。幽霊話すると霊が集まってくるって言うやんか」
「みんなで見るなら、怖ないって」
「いやいや、それだけは断る。現に、旅館の女将・・・やない、娘さんに
『ここは出ます』と、言われたんやろ?」
「ワハハ!!あれは、おいが『この旅館、でそうやね?』って、言うたから、
『出ますよ、私が』って、言うてくれただけよ」
「・・・。そうなんか、野元英俊(仮名)」
「やめてよー!のもっちゃん、私、信じちゃったじゃない(笑)!!」
「よかよか、おいの胸に飛び込んでこい」

とうとう、ダメな遊びが始まってしまいました。円広志(仮名)から始まり、
野元英俊(仮名)、石川優子(仮名)と、怪談話は回りました。とうとう4人が、聞いた話や体験話をし、
私の番がやってきたのです。

「オレはない」

加わってはならないと思ったからです。

「なんか、あるやろ?」
「ない」
「おもろ、ないなぁ」
「オレは、おもろないから」
「よし、2回目は、部屋の電気消さへん?」
「いやいやいや、それはいかん!マジ、やめぇ!!」

私の狼狽ぶりを見て、4人が大笑いしています。

いいのです。子供の時からそうでした。ダメなものはダメなのですから。

突然、円広志(仮名)が立ち上がり、ドアの方へ歩いて行きました。

「すんまへーん!!」
「すんまへーん!!お姉ーさん!!」

円広志(仮名)が、部屋に戻って来たときに手にしていた物は、一本の白いロウソクでした。

「いやいや、円広志(仮名)、それは、いかんて」
「5人で、このロウソクの火を囲んで話ししたら、メッチャ盛り上がる思わへん?」

私の制止は、もはや、4人を暗くさせてしまうことになるだけでしたので、
もう、それ以上は強く言えませんでした。

しかし、もうすでに部屋の空気が変わっているのを感じていたのです。
そのうち、話も尽きるでしょう。それまでの辛抱です。私は、私に話が回って来たとしても、
ただひたすら拒否するだけです。

「他のことを考えていよう」

ロウソクを囲んだひとりひとりの顔は影で揺れています。
円広志(仮名)の話は、実体験話でした。この業界、本当に体験している者が多いのです。
私たち4人は、円広志(仮名)の話に、どんどん引き込まれました。違うことを考えることができないのです。

その話がクライマックスを迎えようとしていたときでした。
突然ロウソクの火が消え、その消えたところで、

「バチッーー!!!」

と、部屋中に鳴り渡ったのです。それは、電気がショートした時に起きる音でした。

一番大声を上げたのは、話をしていた円広志(仮名)でした。

「ぎゃー!!!!!!」

それに続いたのは、もう誰の声なのかは分かりませんでした。
ただ、暗闇の中で、大声で叫びながら石川優子(仮名)が、野元英俊(仮名)に抱きついたのが分かりました。

そして、野元英俊(仮名)が、石川優子(仮名 )に言い放った言葉と、音が聞こえました。

「どかっ!!離れんかぁーー!!」

私は、何をどう叫んだのか覚えていません。

「明かり、つけろーー!!!」

私は、立ち上がった私の額に、電球のヒモが当たったのがわかりましたので、そのヒモを、思い切り下に引きました。

円の顔は真っ青になり、野元は布団に頭を突っ込んでいました。
石川優子がいないのです。

しかし、すぐに発見できました。
フスマが、「大」の字になって破れていたからです。

破れたフスマは、野元英俊(27歳仮名)が、飛びついてきた石川優子(22歳仮名)を、蹴り飛ばし、
それにより飛んでいった石川優子(22歳仮名)の形のまんま破れていました・・・。

私は、恐怖のあまり、懸命にその部屋を飛び出し、自分の部屋のドアの前で、
再び、

「ぐえぇぇぇぇ!!!!!!!!」

と、気絶してしまいました。

今でも、あの日のことを語るとき、すべての絵を鮮明に思い出せます。

朝、旅館を後にする私たちは、言葉少なでした。
その一夜の出来事を、その旅館でしてはならないと思ったからです。

翌日の朝は、台風も過ぎ去り、鳥のさえずりさえ聞こえました。

飛行機は、11時過ぎでしたが、直ぐにでもそこを離れたかった私たちは、8時に旅館をでました。
タクシーを待つ時間さえ、長く感じると思い、通りに出てタクシーを拾おうと考えたのです。

私たちは、その旅館を逃げるように出てました。

私は、この旅館の名前だけは絶対に覚えていようと思い、
振り返ったのです。

「おい!!みんな!見ろ!!!」

振り返ったそこには旅館などなにもなく、
ただの原っぱだったのです。


あの夏の日の出来事を、私「田中昌之(仮名)」、通称「マー坊」は、忘れることはありません。

田中昌之(仮名)、28歳。
28歳で、おっさんバンドと呼ばれていたときの話です。

「恐怖旅館」 エピソード4 完



代筆

旅行不参加でも、その場に居合わせた気になってしまった
5人目のASKAです。


このお話の中で、実際にあったこと

1) 台風で欠航になり、石垣島の古旅館に宿泊したこと。
2) マー坊が、プラスティックパネルのドアの前で、自分の影を見て大声を出したこと。
3) 日本人形の存在。
4) 全員が囲んで幽霊話をしていた時に、「バチッ!!!」っとなったこと
5) 石川優子が恐怖で抱きついた野元英俊に、蹴り飛ばされ、吹っ飛んで行ったこと。


話を盛ったところ、

上記、1)2)3)4)5)、以外全部。

ご拝読、ありがとうございました。


ASKA(2018/4/30 18:46)

COMMENT

「恐怖旅館」 エピソード4 最終章のコメント

  • ニックネーム:o・tomoko
    おはようございます😄
    一気に読み進んで、
    マー坊さんかぁ〜い!
    って
    新喜劇ズッコケしました🤣

    あぁー面白かった😆
  • ニックネーム:春美…ぱるごん♡
    ASKAさん、おはようございます🌤️

    恐怖旅館の影響で…
    とてつもなく怖い夢を見ましたよ…🥶🤪

    起きたらまずコメントしようと思いました😂
    夢でよかった…🥺
  • ニックネーム:kaede
    怖さあり、笑えるお話ですね‼️
  • ニックネーム:みっちゃん
    めっちゃ怖かったー😱
    でもめっちゃ面白かったです😂
    特にユッコさんのくだりが🤣🤣🤣

    神秘体験は好きですが、幽霊は見たくないでーす👻☠️💀

    でもはいむるぶしは本当にステキなところですね〜!24時間が夢のような場所でした〜!
    今でも変わってなかったらまた行きたいで〜す❣️
  • ニックネーム:サルヴェ レジナ
    追: バカのための思考 の本 の様です。 ☞ いろ一んな記になるでしようぉ

    🎶この一き 何の気 気になる気になる 気ですから🎶