危ない初体験
「私、歌手を目指してるです」
「へぇ。そうなんですね?」
「大丈夫でしょうか?」
「何がですか?」
「年齢ですよ。もう、30歳を過ぎてますので」
「あ、今は、年齢は関係ないですよ。40歳でも、50歳でも音楽をやれる時代ですから」
「そんなこと言っていただくと、勇気がでます」
「いえ、本当にそうなんですよ。オリジナルはお持ちですか?」
「はい。時々ストリートで歌ってます。もちろんASKAさんの曲も歌わせて貰ってますよ。」
「それはうれしいですねぇ。」
街は夕暮れ。
たわいもない男同士の会話。
信号が青になる。
急に歌い出す男。
「ほら、あの曲ですよ。♪お〜いかけてぇ、お〜いかけても、つーかーめない、ものばかりさ〜って曲。」
「『太陽と埃の中で』でですね?」
「そう!その曲。一緒に!はい!!あ〜いしてぇ、あーいしても〜・・・一緒にっ!!!」
「いえいえ、僕はいいですよ・・・。」
「もう、歌われないんですか?」
「まぁ、こういうところでは・・・」
前に居て、時々振り返る男。
ASKA、気まずいわけではないが、スマホをいじる。
「『SAY YES』を、コピーしてましてね。」
「ああ、あれはコードが複雑ですからね。」
「キーはDですよね?」
「オリジナルはEフラットですが、Dの方が弾きやすいですね。」
「ええ・・・?」
急に、黙る男。
ASKA、間が持たなくなる。
つい、声をかける。
「どうしました?」
「Dで、コピーしてました・・・」
「いいじゃないですか?」
「でも、やっぱりプロの方は、Eフラットでやられてるんですね? ・・・。」
どうやらその男、自分が「SAY YES」を、半音下げて歌っていたことがショックだったらしい。
「キーなんか、まったく関係ないんですよ。その人のキーに合った歌を歌うのが一番なんですよ」
「ホントですか!?」
「そうです。どうも、高い声を出すことが、歌のステータスになってる風潮がありますけど、あれは、大間違いなんですよ。キーなど、まったく関係ありません」
とたんに元気になる男。
「いつもプロのシンガーと同じキーで歌おうとしていました」
「それが間違いなんです。あなたが、もしプロだったら、自分の曲を自分のキーで歌われないとイヤですか?」
「なるほどっ!!!」
男の後ろ姿が、大きくなった感じがした。
「はい。ここでいいですよ」
「お金貰っちゃって、いいのかなぁ?」
「当たり前ですよ。1690円ですね。はい、これ。300円だけください」
「ありがとうございます!」
「こちらこそです」
ひとりになるASKA。
独り言・・・。
「ああ、びっくりした・・・」
ASKA、タクシーで、運ちゃんに、歌わされそうになったのは初めてだったのである。
運転手さん、プロ歌手目指して、頑張ってください。
ASKA(2018/3/05 21:57)
「へぇ。そうなんですね?」
「大丈夫でしょうか?」
「何がですか?」
「年齢ですよ。もう、30歳を過ぎてますので」
「あ、今は、年齢は関係ないですよ。40歳でも、50歳でも音楽をやれる時代ですから」
「そんなこと言っていただくと、勇気がでます」
「いえ、本当にそうなんですよ。オリジナルはお持ちですか?」
「はい。時々ストリートで歌ってます。もちろんASKAさんの曲も歌わせて貰ってますよ。」
「それはうれしいですねぇ。」
街は夕暮れ。
たわいもない男同士の会話。
信号が青になる。
急に歌い出す男。
「ほら、あの曲ですよ。♪お〜いかけてぇ、お〜いかけても、つーかーめない、ものばかりさ〜って曲。」
「『太陽と埃の中で』でですね?」
「そう!その曲。一緒に!はい!!あ〜いしてぇ、あーいしても〜・・・一緒にっ!!!」
「いえいえ、僕はいいですよ・・・。」
「もう、歌われないんですか?」
「まぁ、こういうところでは・・・」
前に居て、時々振り返る男。
ASKA、気まずいわけではないが、スマホをいじる。
「『SAY YES』を、コピーしてましてね。」
「ああ、あれはコードが複雑ですからね。」
「キーはDですよね?」
「オリジナルはEフラットですが、Dの方が弾きやすいですね。」
「ええ・・・?」
急に、黙る男。
ASKA、間が持たなくなる。
つい、声をかける。
「どうしました?」
「Dで、コピーしてました・・・」
「いいじゃないですか?」
「でも、やっぱりプロの方は、Eフラットでやられてるんですね? ・・・。」
どうやらその男、自分が「SAY YES」を、半音下げて歌っていたことがショックだったらしい。
「キーなんか、まったく関係ないんですよ。その人のキーに合った歌を歌うのが一番なんですよ」
「ホントですか!?」
「そうです。どうも、高い声を出すことが、歌のステータスになってる風潮がありますけど、あれは、大間違いなんですよ。キーなど、まったく関係ありません」
とたんに元気になる男。
「いつもプロのシンガーと同じキーで歌おうとしていました」
「それが間違いなんです。あなたが、もしプロだったら、自分の曲を自分のキーで歌われないとイヤですか?」
「なるほどっ!!!」
男の後ろ姿が、大きくなった感じがした。
「はい。ここでいいですよ」
「お金貰っちゃって、いいのかなぁ?」
「当たり前ですよ。1690円ですね。はい、これ。300円だけください」
「ありがとうございます!」
「こちらこそです」
ひとりになるASKA。
独り言・・・。
「ああ、びっくりした・・・」
ASKA、タクシーで、運ちゃんに、歌わされそうになったのは初めてだったのである。
運転手さん、プロ歌手目指して、頑張ってください。
ASKA(2018/3/05 21:57)
COMMENT
危ない初体験のコメント
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ニックネーム:アッコもう〜❗️このストーリー、大体は
分かってはいたけど、ここまで面白いとは…🤣その時のASKAさんと運転手さんのやりとりの仕草を全て見たかった🎶👌😆 -
ニックネーム:ASKAloveASKAさん、こんばんは。
楽しいタクシーのドライバーさんで良かったです。
何度目?って数えるくらい
「話せるようになったんですね。」
と言われるより、
「一緒に歌おう」
と誘われる方が楽しいですもの。
でも、ASKAさんの前で歌い、一緒にと誘ったドライバーさん勇気あるな・・・ -
ニックネーム:Nono beanこう言うオチだったとは…
-
ニックネーム:みぃASKAさんの会話は、楽曲と同じで愛に包まれてるんだなぁ。
貴重なプライベートの時間、アマチュアさんに対してこんなに壁を作らないアーティストがいるのだろうか。
先日、ASKAさんとマー坊さんと諸星かーくんが審査員のオーディション番組を観覧している夢を見ました。光GENJIのようなグループを作る!という。
こちらを拝読してから、abcテレビのBOY BAND(オーディション番組)を観てたせいかなぁ。
ASKAさんが審査員の番組、観たい!! -
ニックネーム:まこちんはい、ASKA✋。
運転手、面白い。
まさかASKAに逢えるとは思っていなかったろうね。
嬉しかったんだろうな。
羨ましいな。
そのタクシー、桜にNのタクシーでしょ。