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第101回「ASKA Terminal Melody」〜リクエスト回

昨日1月8日に放送になりました「ASKA Terminal Melody」

1) ロケットの樹の下で
2) そんなもんだろう
3) tomorrow

の3曲でした。

「ロケットの樹の下で」

は、当時C&Aのディレクターだった「村田努」と、3日間一睡もせずデモ制作を行った曲です。
あの頃、僕はソフト「ロジック」を導入したばかりで、どうすればどうなるのか、何ができるのかを全く知らなかった。
村田が「ロジック」を使っていました。
3日間、付き合わせたなぁ。

最初は、ビートのある曲を作ろうとし「何か違う」が1日半近く。
メロディが定まらない。
どんどん変化していくわけです。

珍しく「シングル曲」を決め打ちして制作に入った。
いつもは選ぶのだけど、あの時は「シングル曲を作ろう」と。

「勢いのあるビート曲を」というのは、あの頃発表していた楽曲の流れがそう思わせただけで、
テンポに拘るのをヤメて、まずはメロディ重視で進めようということになりました。

そのように気持ちの切り替えができた途端、楽曲が進み出した。
切り替えの間に、ただひたすら洋楽を聴いたのも良かったかな。
「どのアーティストの」ということではなく、目の前に積まれたCD、CD棚から無造作に引き抜いたCD。

心のどこかに誰かのメロディが響いていたのでしょう。
作りながら、

「これ、さっき聴いた楽曲に雰囲気が似てないか?」

と、なりそれを探したのだけれど、片っ端から聴いていたので、誰の曲だったのか探しているうちに時間ばかり経ってしまう。
それを見つけたところで、それを聴いてしまうと、求めるモノがそれに近づいてしまう。

「このような感じだった」

だけを大事に作り込んでいった。
元々、ビートモノでガツンとくるような楽曲を目指していたこともあり、テンポを落としても求める世界観は同じでした。
バラードとなると、曲の入り口はまず抑えがちになる。
でも、この曲はしっかり声を出せる音域でメロディを作ってみようと。

イメージは違いますが、その手法は「next door」でも使っています。
音(楽器)は抑えても、歌は抑えない。
そして、サビではシャウトできるように。

編曲は「松本晃彦」にお願いしていましたが、あの日あの時は、徹底的に作り込んでから渡そうと決めてた。
2番が終わっての間奏のギターのメロディも決め込んでた。

以前から語っているように、僕は間奏でのギターにもメロディがなくてはダメ。
アドリブに聴こえても、実はアドリブじゃない。
イントロからエンディングまで、全てがメロディで橋渡しできたモノでなくては自分が気持ちよくなれない。

もちろんコードだけのカッコ良さを求めることもあります。
でも、メロディですね。

歌詞に関しては、 Aメロ、Bメロの流れを変えてしまうくらい分かりやすい言葉でサビを歌いたかった。

「ここは途中だ 旅のどこかだ」

あの頃、ちょうど友人が自ら命を絶った時だった。
それが「ここは途中だ 旅のどこかだ」になったことは隠しません。
この言葉を伝えたかった。

「ひとつだけ多くても ひとつ何か足りなくても終わるもんじゃない」

と、言って歌詞の全体をそいつに合わせたわけではありません。
僕の年齢の友人たちと共有していた気持ち。

「そろそろ、どう生きたか人生の尻尾が見えてきた」

でも、途中だ。
まだまだ旅のどこかだ。

そして「詩は色感」「詞は語感」という持論を持ち出すところがあった。

「お前のコピーも 大人になれば解ってくれるさ」

これ、離婚して子供と離れなくてはならなくなった友人への1行。
そいつの子供の顔、そいつにそっくりでね。
それを「コピー」と書きました。

表現よりも「語感」を取った。

この曲は、リリース時よりライブで歌ってから注目を浴びた。
きっと、そうなるだろうなと思っていました。
歌うごとに気持ちが込められていった。

子供の頃、

合図もなしにゴールに向かって駆け込むように笑いながら走ったことがあったんです。

あの日の光景は歌うたびに鮮明に戻ってきます。


ASKA(2023/1/9 23:20)